第34話 「空中野郎会談」

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高原喫茶の螺旋菓子 第34話 「空中野郎会談」


マフラーの男は、
立ったまま遠くを見つめながら、
胸のポケットからズーマーニ地方で流行っている酸素タバコを取り出して、
口にくわえた。


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「おれがここへ来てから、もう3年たつ。」



男も同じように青く横たわる山々の向こうを見やった。


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なぜだかぼんやりと、
巻き貝の中で暮らしていたことを思い出していた。



ずいぶんと遠くまでやってきたものだ。




マフラーの男は続ける。

「おれの元の身体も、いまだにあの2階の奥で、
ロールケーキを食べ続けている。」




その瞳が、少しだけ潤んだ。



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「そして、いままで何人もの男が、
無駄な抵抗を試みるのをみてきた。」


男は、混乱した気持ちを抑えるように、
もう一度、
視線を上げてみた。


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白とオレンジ色の風がゆったりと渦巻いている。



うっすらと屋根の焦げたにおいが漂う。


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マフラーの男が腰を降ろし、
男のほうに向き直った。




「もう済んだんだ。つまんないことするもんじゃない。」




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男は黙っていた。


「それに、教えておいてやろう、あの喫茶のママは…」


マフラーの男がそこまで言ったときに、
はじめて男が口を開いた。


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「知ってるさ。あれはもう、脱けてるよな。」





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(つづく)


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# by electric_uc | 2011-06-09 22:21 | 螺旋菓子